「スラッシュキャリア」という言葉をご存じでしょうか?
一般的には次のように定義されています。
異なる専門性をかけ合わせることで、唯一無二の「市場価値」や「希少性」を生む新しい働き方、キャリア構築の方法。コーチングの神様・マーシャル・ゴールドスミスらが提唱する概念。キャリアタグを増やすことで、市場価値を一気に高める。
「魔法のコンパス」「えんとつ町のプペル」で活躍の場を広げているキンコン西野さんも、自身のブログの中で複数の肩書きを持つことの有用性を語っています。
最近ではホリエモンこと堀江貴文さんが『多動力』という本を出版し、何万の仕事を同時に動かす究極の力を身につけることが、これからの時代の必須スキルだ、と綴っています。
参照:東洋経済ONLINE 「多動力こそが最も重要な能力だ」
また、ニシノさんもホリエモンさんも推薦する、藤原和博さんの『必ず食える1%の人になる方法』という書籍の中でも、複数の専門性を掛け合わせてレアな人材(1%の人)になることを推奨しています。
参照:東洋経済ONLINE 「必ず食える「1%の人」になる方法」
では、私たち個人起業家たちは、このスラッシュキャリア(スラッシャー)という概念をどのように考え取り入れていくと良いのでしょうか。
すでに副業ならぬ「複業」という言葉の誕生や、セカンドキャリア、パラレルキャリア、などの表現も生まれています。
もしあなたが、
「私ってスラッシュキャリア組かもしれない!」
「スラッシャーとして起業しよう!」
と思ったら、ぜひ一度この記事に目を通していただければと思います。
これまで200名以上の女性起業家のサポートをしてきたコンサル実績から、私の視点で見えているものをお伝えしていきたいと思います。
なぜ新しい働き方に感じるのか?
2014年頃から特にSNS上で盛んになった女性起業は、「起業女子」というブームも手伝って急激に広まりました。
そして2016年を最後に終焉を迎えました。
その過程で流行したノウハウの多くはSNSやブログ、メルマガ、LINE@、インスタグラムを使うネット起業のものでした。
やり方、ノウハウは画一的で、SNSで認知を広げ、ブログのファンになってもらい、メルマガで顧客化する、というステップです。
ですが、それらのネット集客に対する抗体をエンドユーザーにあたる消費者が身につけはじめたという現実があります。
「釣り記事」「煽り記事」に対するリテラシーが高まったとも言えます。
「スラッシュキャリア」のはたらき方は、非常に複雑なプロセスから現実を生みます。
特に興味関心の赴くままに行動する中で、勝手に集客ができてしまったり、勝手に求められたものからサービスが生まれたり。
そして時には影響力のある人の目に止まり引っ張り上げてもらえたり、メディアに出演する、ということもあります。
「好きなこと」を「やりたいように」行動することで、自分のエネルギーが高まり、周囲にも良い印象を与え、そこからまた連鎖的に素敵な引き寄せのようなものを生み出します。
これらはまるで、従来の画一的なネット集客のやり方とは真逆の、新しいはたらき方に感じます。
影響力を持つ個人が増え、つながりが強化されている現実があることから、どこにチャンスが生まれ、そのチャンスがどのように育つかを予測するのが難しくなっているのです。
反対に考えると、「好きなこと」を「やりたいように」行動することで、勝手にうまくいく、というようにも感じられます。
戦略的、逆算的にものごとを考えることが苦手な方にとっては、非常に魅力あるはたらき方です。
ですが1つ注目して欲しいのは、スラッシュキャリア的なはたらき方を求めて行動する人間には2つのパターンがある、ということです。
それが、
- 自ら影響力を発揮し巻き込むタイプ
- 影響力ある人間に巻き込まれるタイプ
という両極端な結果です。
影響力を発揮し巻き込むタイプ
カリスマ性があるということ。
これはスラッシュキャリアとして大成する1つの条件になるかと思います。
もう少し具体的にいうと、メッセージ性があり、価値観が明確で、主張も強い。人をビジョンで巻き込み、牽引する力強さのあるリーダーシップがある人間。
さらに言えば、複数のものごとを同時にこなす「タイムマネジメント能力」も必要。
着手した仕事を短期間で8~9割まで仕上げる実行力も必須でしょう。中途半端な取り組みは、お客様からの信用さえ失いかねません。
結果的に巻き込まれるタイプ
ちょっと辛辣な表現にはなりますが、消費者としての自分を抜け出せない状態になってしまうのが「巻き込まれるタイプ」の人間です。
「好きなこと」を「やりたいように」行動することで、セミナーを受けたりコンサルを受けたり、旅行に行ったり、好きなブランドの商品を買ってみたり。
別に悪いことではないですし、自分の心を満たすという意味で非常に大切なことです。
ただ、個人起業家としては「巻き込まれる側の人間」で居続けるわけにはいかない事情があります。
お金を使った金額よりも、生んだ金額が多くなければ経営的には失敗だからです。
スラッシュタイプが成功するには?
私が「本質的戦略メソッド」と呼んでいる考え方があります。
これは、「事業の本質」と「自分の本質」をうまく掛け合わせることで、どんなタイプの人間でも起業がうまくいく、という考え方です。
詳しく解説していきます。
事業の本質とは?
ビジネスをうまくいかせるために欠かせない2つの要素があります。
それが、
- 顧客視点
- ビジネスフレーム
という2つの要素です。
顧客視点というのはそのままの意味で、お客様の立場に立ち、お客様の問題解決をベースに考えていく姿勢を指します。
つまり、「自分が」好きなことを「自分が」やりたいようにやっても失敗するということです。
ビジネスフレームというのは、すでにうまくいっているビジネスモデルをちゃんとマネできているかどうか、ということです。
売れるポイントというのはやみくもに探していたら、10年、20年じゃ見つからないと思います。これが自己流が危険という理由です。
ですが、すでにうまくいくモデルは存在します。その形さえ真似れば成功までの距離は近いのです。
自分の本質とは?
先天的に持っている資質や天才性、価値基準などがひとつ。
そして、経験や価値観、使命、願望、能力などの後天的な要素がもうひとつです。
「好きを仕事にする」という表現は言葉がシンプルなので、あらゆる解釈がされやすいですが、その実際は上記2つの要素を押さえた、本質的な部分を指していると私は考えます。
「やりたいこと」を「やりたいやり方」で「結果の出るパターン」に乗せて実践できれば、どんなタイプ(スラッシュキャリアを望む多動のタイプでも)成功することができると考えています。
あるプレゼンテーションではこのようなスラッシュキャリアを形成する資質のことを、「マルチ・ポテンシャライト」と表現しています。
難しくさせているポイントは?
多動を活かす「スラッシュキャリア」としてのはたらき方を難しくさせるポイントは以下の通りです。
- ビジョンがブレやすくメッセージ性が弱い
- アイデアを形するまでの実行力が弱い
- お金を生む循環に乗るとは限らない
逆に考えれば、上記の「弱み」を人の力を借りて補えば良い、ということです。
方法として色々あると思いますが、その分野に「強み」を持つコンサルタントを雇ったり、仲間を集めることで解消されるでしょう。
まとめ
「スラッシュキャリア」「複数の肩書き」「多動力」。
これらを活かしたはたらき方は、確かにこれからの時代にふさわしい、新しい働き方です。
従来の「目標達成型」のタイプの人は、その特性を活かしながらしっかりと戦略的に、逆算的にビジネスを組んでいくと良いと思います。
一方で「多動」のタイプは、自分の弱みをしっかりと自覚しながら他力をうまく取り入れることが必要でしょう。
この取り組み方は、実をいうとかつて「偶然キャリア(偶キャリ)」という形で日本に広まった考え方でもあります。
私は例えどんなタイプ人間でも、起業で成功するための道を必ずあると思っています。
強みを伸ばし、弱みは他力で補う。シンプルな図式です。
スラッシュキャリアは、非常にwebメディアと親和性の高い生き方だと思います。
ぜひ自分のメディア(SNSやブログ)を持ち、あなたの才能を発信していきましょう。
複数のキャリアタグ(肩書き)が生み出す、あなた独自のweb発信は、これからの世界で非常に大きな市場価値を生んでいくに違いありません。