株式会社和える(aeru)を創設した矢島里佳さんの本を読んだのはもう1年以上前の話。
縮小傾向にある「伝統文化」と「子ども産業」を掛け合わせた起業、想いを紡ぐストーリーに感化され、私自身、自分の働き方を見直す大きなキッカケとなった。
それから実際に東京目黒にある直営店を訪れ、品を買い、そして今回、京都直営店である「aeru gojo」を訪問する。
そこで出会った言葉の数々は、まさに「ブランドジャーナリズム」そのもの。これからの時代の感性経営そのものだった。
伝統産業を未来につなぐ理念とデザイン設計

出迎えてくださったのは、aeru gojo のホストシスター・中川さん。
一緒に写真を撮るのを忘れてしまったので、何かご紹介できるものがないかなと思ってWEB上で探していたら、こういう記事が見つかりました^^
aeru gojoホストシスター中川、京都・与謝野町で日本酒作りに挑戦中!その1
あたかも取材に行ったかのような雰囲気でこの記事を書いていますが、実際はそうではなく、ただのお客さんとして訪問してます。笑
それなのにたくさんの写真を撮らせていただき、ブログやSNSでのシェアもOKとのことで、気持ちよく記事を書かせていただいております。

和える(aeru)さんの直営店へ伺う時の一番の醍醐味は、何といってもスタッフさん(ホストマザー、ホストシスター)と会話をすること。
今回お店を訪問して一番最初に驚いたのが、お隣の糸屋さんと入口を共有しているという点。
そういえば京都の文化として「玄関の共有」みたいなものがあったな…、という学校で習ったようなそうでないような記憶が一緒に蘇る。

実は最初、どこに和えるさんがあるのか分からずに通過してしまった。
一見すると糸屋さんの玄関口にしか見えないけれど、よくよく見るとaeru gojo でのイベントが書かれた立て看板や赤い字で「aeru」と書かれたポストも見てとれる。

中に入るとさっそく、数々の伝統産業品が目に入る。
どれもオンラインショップのホームページで何度も食い入るように見た品々ばかり。



ちなみにこの日はさっそく「 こぼしにくいコップ」を購入しました。
うちの子もいま3才で、ラインナップの中ではこれがいちばん日常使いができそうだったのが理由。

でも実をいうと、購入の決め手となったのはホストシスター中川さんのこんなセリフ。
「少し先の話ですけれど、お子さんが二十歳とかになって一人暮らしをするとき、このコップも一緒に持っていってくれるかもしれません。これ、日本酒を飲むときにもピッタリのサイズなので。笑」
という台詞。
そう。
和える(aeru)さんの品々は、子ども向けのように見えながらも実は、大人になってからも使い心地が良いようにデザインされているのが特徴。
そういう先の先までを考えて設計しているところに「伝統産業を未来につなぐ」という信念が現れていて本当に素晴らしいなと思う。
その時にもうひとつ、とても面白いお話を伺うことができました。
それが、経営や売上面でのお話。
既存の経済指標では測れないソーシャルインパクト
お店を訪れるお客さんたちの中には、悪気はないけれど純粋な気持ちで、
「売上はどうなってるの?」
「会社として経営は大丈夫なの?」
と声をかけられることも多いそうなんです。
ひとまずその回答としては「それが、大丈夫なんです」というもので、実は意外に知られていないのが、和えるさんは複数の事業展開をしているという点。
和えるのこれからの取り組み のページで発信されているように、実はホテルのプロデュース事業やオーダーメイド事業など、複数の事業にも取りかかっているのです。
今回伺った際にも、「先月、やっと私も保育士の資格を取りまして」と嬉しそうにスタッフの方がお話をしていました。そう、保育園の設立準備に向けての動きだそうです。
2011年3月という震災の直後に作られた和えるさんは、「日本の伝統を 次世代につなぐ」というミッションに妥協なく、今でもまっすぐに進んでいるのです。
一方でどうしても従来の価値観では、売上という経営指標だけで判断されがちな日本の視野に対し、
「ソーシャルインパクト」という視点でインパクトレポートを作成している、というお話も興味深かったです。
日本のビジネスはつい数字にばかり目が行きがちですが、「和える」は利益の追求を最終目的に据えていません。もちろん会社である以上売り上げも大切ですが、「売ること」を最上位に設定すると、どうしても大人の事情をくんで、妥協した商品ができ上がってしまいます。それでは短期的に売り上げが上がったとしても、長い目で見て、商品の本当の魅力や職人さんの技術が伝わりきらないまま、一過性で終わってしまいます。
引用: 伝統産業を現代の感性に和えて、次世代につなぐ。 28歳女性社長の「感性の経営」
日本ではまだなじみがありませんが、私たちは「インパクトレポート」を出していきたいと考えています。インパクトレポートとは、簡単に言うと、経済指標では測りきれない価値を見える化するものです。具体的には、私たちの商品がある保育園の給食で使われると、1年で何人の子どもたちに日本の伝統に触れていただけるか、2年、3年経つと何倍に増えていく、といったようなレポートです。
今は世界がどんどんひっくり返っている世の中です。
一昔前までは、働いて会社から給料をもらうのが当たり前だったのが、最近ではこっちがお金を払ってオンラインサロンで働かせてもらう、という構造も当たり前になってきています。
大企業がひとりのYouTuber にうん百万円も払って、動画に出演させてもらうなんていうのもよく考えたら一昔前ではありえない話。
今でこそ「YouTuber」というラベルが作られたからいいものの、よくよく見れば芸能人でもタレントでもなかった人たちが台頭してきているわけで。
このひっくり返った世の中で、いつまでも「売上」という指標だけで会社の貢献度や成長性を判断するのはある意味で「異常」なのかもしれない。
そういう時代背景を察知しての「インパクトレポート」の制作。
もう本当に、感動でしかありません。
コンセプトの違う、目黒店と五条店


和える(aeru)さんは本当に、すごくピュアな感性経営をしながらも、しっかりと本質を捉えた経営戦術もお持ちだなといつも勉強になります。
例えば、購入した食器が壊れた場合も「お直し」ということで「金継ぎ」をしてくれるのです。
子どものお誕生日にはバースデーカードが届きますし、お店では頻繁に子ども向けのイベントなども催されています。
メディアへの露出も多く、さまざまな切り口からPR活動をされていますし、新規事業を構想して乗り出すまでのタイミングの掴み方も絶妙。
正直、かなりの経営センスなのではと見ています。お店では一切のセールストークがありません。それがゆえに、ついつい私も買ってしまうのです(笑)。


その中でも、お店のコンセプトを東京目黒直営店と、京都五条直営店でまったく違うものにしたのは、かなりユーニクだなと思ったのです。
だって、ファンになったら両方とも行きたくなってしまう。笑
和えるは小売業ではなく、ジャーナリズム業なので、創業時からお店の数はあまり増やさないと決めてるの。だから今、直営店は、オンライン直営店、和えるのお家として東京直営店「aeru meguro」、和えるのおじいちゃん、おばあちゃんのお家として京都直営店「aeru gojo」の3つがあります。あとは、和えるの別荘ができたらいいねと、みんなで話してるんだけど……それはまた、数年後かな。
さいごに

矢島里佳さんの動きを見ていると、なんとなく最近のホリエモンや箕輪厚介編集者、ニシノアキヒロ、佐藤航陽、落合陽一、というような面々と同じ匂いがするような気がするのは私だけだろうか?
世の中がひっくり返っているこの世の中で、まっすぐに一人だけ、確かなコンパスを持って航海しているような錯覚を覚えてしまう。
感性経営、ソーシャルインパクト…。
そして実はそれだけでなく、ロボットの活用など最先端の事業と「伝統産業」を掛け合わせる構想など、矢島里佳さんが登場する取材記事を追っていると、本当に驚かされることばかりが書かれている。
ミレニアル起業家たちの、新しい経営が始まっている──。
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