「USPが欲しいです」「USPを作ってください」。
継続コンサルのご依頼を受けて、面談をしている時にそのようにリクエストをする方ってけっこう多いです。
人によっては「肩書きが欲しいです」「キャッチコピーが欲しいです」。という言い方をします。
その度に思うのは、USPやキャッチコピー、肩書きの定義がめちゃくちゃに混在してしまっていることと、人によって定義がバラバラだな、ということ。
本日の記事では「正しいUSP」の定義をお伝えしますので、ぜひ手順に従ってご自身の「USP」を作成してもらえたらと思います。
USPとは守るべき約束
お客様からお問合せをいただいた際に「私はこれができます。これをお約束します」と言えるものがUSPになります。
USPとはそもそも、ユニーク・セリング・プロポジション(Unique Selling Proposition)を日本語的に意訳し、「独自のウリ」とか「独自の提案」と認識されているところから誤解が始まっています。
以前私が勤めていたインテリアメーカーは「翌日納品」をUSPとしていました。
つまり、前日のお昼までにご注文をいただければ、翌日にはオーダーメイドのインテリアを納品しますよ、という具合です。
USPとは顧客の切り捨て行為
お客様にご提案した約束を守ることがUSPの正体です。
ということは、同時に意味することはお客様を切り捨てる、ということです。言い換えれば、約束を守れる範囲のお客様にターゲットを限定する、ということになります。
例えば、完全個別指導の学習塾があったとしましょう。
そこへある日「兄弟で同じ時間に通わせたいから、兄弟でセミプライベートクラスを作ってくれませんか?」というお問合せがきたとします。
せっかくのお問合せではありますが『完全個別指導』をUSPとして掲げて結果を出すのであれば、この手のリクエストはお断りしなければなりません。
ただし、ここで違和感になるのは「そういった体裁を取ることがUSPなのか?」というと、それはまったく違うわけです。
大切なのは、どんな結果をお約束できるのか、というコミットの部分です。
そうした結果へのコミットを約束する過程で、完全個別指導という形が必要だからこそ、その形式にこだわり、その代わりにお客様と約束する結果をちゃんと守る、ということになります。
そう考えると、USP(=お客様と約束した結果)を果たせなかった場合には全額返金保証をする、ぐらいが究極の形なのかもしれません。
そうすると冒頭に出てきたような「USPを作ってください」「USPが欲しいです」という発言がいかに軽率で軽いものなのかが分かると思います。
USPとは、もっともらしい言葉を並べ立てるキャッチコピー的なものではなく、自分たちだからこそお客様とのお約束を守れる結果は何か?ということを大事にしなければいけません。
USPは3つの視点から考える
USPとは、お客様との約束を守るための「コミット(固い誓い)」ということをお伝えしてきました。
それではさっそくUSPを作っていきたいと思いますが、この時に大事なのが3つの視点を持つということです。
自分の頭の中だけでアレコレと考えたものは、まったくUSPとは違うものになってしまうので注意して作っていきましょう。
①顧客視点
お客様との約束を守ることがUSPの本質でしたが、肝心なのは、お客様が欲しいと思っている結果に対して約束することです。
よくある勘違いが、空想上のお客様が求めるものを勝手に想像して作ってしまう場合や、自分がこれまで習ってきたことや経験してきたことをまとめて「これなら約束できる!」というものをUSPにしてしまうことです。
冷静に考えてみれば分かりますが、あなたが作りたいもの、与えたいものが、必ずしもお客様の欲しいものとは限りません。
②自分視点
お客様の欲しい結果に対して約束をする、ということがUSPなので、当然ですが、あなたにその約束を守るだけの商品力がないと意味がありません。
そもそも守ることのできない約束を安易に結んでいくということは、長期的に見てどんどん信用と信頼を失う行為です。
自分、または自分たちにその約束が守れるのかどうか。現時点で守れそうにないのだとしたら、何をプラスすればその約束を守れるのかを考えるようにしてみてください。
③ライバル視点
最後に意識すべきはライバルとの比較優位性です。
ここで大事なのは、ライバルよりも自分たちが勝っているかどうか、ということではありません。そうではなく、ライバルと比べて【違い】があるのかどうか、が重要になります。
その違っている部分に、独自の絶対優位性が生まれます。
そしてもう一つ勘違いしやすいのが、お客様の目から見てライバル、お客様の頭の中で比べている相手がライバルです。
自分たちが勝手に同じ業界だからとか、同業者だからと見ている相手はライバルでもなんでもありません。
そうではなく、あなたの商品を検討する人たちが、実際に頭の中で比べている相手たちが真のライバルであることを忘れないようにしてください。
USPの具体例
ここまで「USPとは何か?」について解説してきましたが、具体例を見た方がよりイメージがしやすいと思いますので、有名企業のUSPをいくつかご紹介したいと思います。
これからご紹介するUSPのすべてが、お客様の視点、お客様の悩み解決、お客様の満足にポイントがあることを意識しながら読んでいただければと思います。
30分でお届け │ ドミノピザ
美味しさよりも、早く宅配して欲しいというニーズに応えたUSPです。
30分以内にアツアツのピザを食べたかった層に向けて作られたため、美味しさを重視する客層を切り離した例の一つです。
今ではどこのピザ屋でも当たり前のものになってしまいましたので、一時的な戦略としてのUSPだった、という見方ができるかなと思います。
手で溶けないチョコ │ M&M’s
日本のマーブルチョコレートをイメージしてください。
当時は子どもたちがチョコレートを食べる時に手を汚してしまってお母さんたちを悩ませてきました。そこへ登場したのが砂糖でコーティングしたチョコレートです。
これでもう、手は汚さず、口の中だけで溶けるチョコレートの完成です。キャッチコピーは「お口でとろけて、手でとけない」でした。
会えるアイドル │ AKB48
変わり種でいうと、CDを買えば握手の権利が得られるというオファーの付いてくる売り出し方もまたUSPの1つです。
アイドルに会いたい、話したい、握手したい! というニーズに見事に応えていますよね。
所要時間10分 │ QBハウス
「ヘアカット1000円 所要時間10分」というキャッチコピーは当時とても破壊力がありました。
美容業界がハイクオリティな技術と設備を追い求める中で「散髪にお金も時間もかけたくない」と思っている人たちの欲求に応えた商品でした。
月額課金制+宅配レンタル │ TSUTAYA
これまではレンタルショップに実際に足を運んでレンタルビデオやCDを選ばなくてはいけなかったのが、自宅で可能になった例です。
利便性を求めていたお客様のニーズに応えた好事例ですね!
絶対にキャッチコピーから作らないこと
あなたはなぜそのビジネスをするのか? あなたの上得意客であり、あなたから見ても理想的な、たった1人のV.I.P顧客が望むことは何か? そしてその解決法は、ライバルの方法とどう違うのか?
この3つを押さえた上で、それを一言で表現するのが「キャッチコピー」です。
自分が起業する理由もあいまい(多くの場合、自分が豊かに自由になりたいばかり)で、自分が誰のどんな悩みを具体的に解決できるのかも不明瞭で、真のライバルがどのような商品を扱っているのかも知らない状態で、キャッチコピーは作りようがありません。
だからこそ、正しいUSPを作るためにも次の手順を踏んでください。
1. お客様はなぜ問題解決できていない?
商品を買う理由を考える際に、なぜ他の商品ではその問題を解決できていないのかを考えてみてください。
もしくは、お客様自身が自分たちの問題、本質改題に気がついていないかもしれません。そのために解決できていないとしたら、あなたはどんなメッセージを伝えることが大切でしょうか?
例えばオシャレになりたいけれど、踏み出す勇気がない方がいたとしましょう。
世の中にはたくさんのメイクレッスン講師やファッションアドバイザーのような方々がいます。なぜその人たちに依頼しないのでしょうか? その依頼しない理由を考えていくところに答えがあるかもしれません。
2. どうすれば解決手段を提供できる?
あなたがすでに全ての解決手段を持っていれば良いですが、そうでない場合、どのようにすればお客様にUSPを提供することができるでしょうか?
ここを考え抜くことがあなたの商品力であり、USPとなる核の部分になります。ありきたりの商品を売るのはとても難しいです。
どんな角度、どんな切り口で、お客様がまだ満たしきれていないニーズを満たしていくことができそうかを考えてみましょう。
参考:USPの作り方
基本的に私は、USPとかポジショニングは起業してから2年目以降に作った方が間違いないと思っていますので、そのための方法をお伝えします。
もし1年目からUSPを作るとしたら、それまでに学んできたこと、経験してきたこと、習得してきたスキル、ノウハウなどのキャリアを棚卸して、そこから市場リサーチなどをしていく流れになりますが、当たり外れがけっこうあります。
やはり起業は土台をしっかりと、確実に黒字化させていくのか個人起業家の場合はセオリーかと思います。
プロモーション
自分の経歴などで独自性を謳える切り口を見つけ、まずは目立つことをします。
たいてい、自分が本当にやりたいことは横に置き、プロモーション上、有効なことを優先する必要がある場合が多々あります。まずはまったく誰にも知られていない前提から、認知活動を進めていきます。
サービス開発
認知を広げ、無料や低価格なもので人を集めることに成功したら、その集まっている人たちに対してヒアリングを行います。
要は、何が欲しいのか、何に困っているのか、自分に何をして欲しいのかを具体的に聞いていきます。
このプロセスを省略すると、自分本位で顧客視点の欠けたUSPになってしまいます。
本人たちが問題を自覚していない場合は、その潜在ニーズをくみ取り、顕在化させてあげます。
多くの場合、時間の使い方が下手なだけで売上が伸びないというケースがあるので、本人が自覚していないようでしたら、その本質原因を伝え、タイムマネジメントの商品を売る、というようなイメージです。
セールス
商品が出来上がったら、実際にヒアリングをした方々を中心にセールスを行っていきます。
すでに欲しいと言っていたものを売るのでそこまで難しくはないはずです。この時に、顧客が望み、自分が提供できて、ライバルとは違うことを打ち出せればOKです。
それによって生み出される結果にコミットできる、お客様とお約束ができるのであれば、それはUSPと呼べるでしょう。
まとめ
USPとは何か? なんとなくご理解いただけたでしょうか?
独自のウリと単純に理解していたり、キャッチコピー的な商品メッセージだと勘違いしていた方は、今回の記事を何度も読んでいただき、実際にUSPを作ってみることをお勧めします。
商品にUSPがあれば、それだけで集客も売上も簡単になります。