わかりやすく言うために「起業」という表現を使ってますが、今日の記事内容はどちらかというと「企画」や「プロジェクト」のニュアンスで捉えてもらいたいと思っています。
私の中で、「なめらかな起業」を実現している会社のひとつに出張フォト撮影サービスをしている 『株式会社ラブグラフ』さんがあります。
2019年の2月には、2億円の資金調達のニュースで沸いていましたね。
参考:クリエイティブ駆動で世界中の人を幸せに──ラブグラフが2億円の資金調達
設立が2015年なのですが、もともとは大学生の男女二人組がカップルの撮影写真をWebに乗せて 発信するところからスタートしています。
「ビジョンドリブン」
と本人たちも言っていますが、 要はビジョンありきで 利益のことなんて考えずに大学生のときに起業した会社なんですね。
私は、自分も、周りの人も、「なめらかな起業」ができるのが私の目指す「一人ひとりに『居場所』のある世界」の実現にもっとも早いと感じています。
さて、ではどうすればこのような起業(※)ができるのか? ひとつの視点は、「好き」と「強み」へのフォーカスです。
※ ここでは事業を立ち上げるすべてのことを「起業」と表現します
好きなこと、強みで起業をするということ
好きなことで起業しよう、強みを活かして起業しよう、なんていう言葉は本当に使い古されている節もありますが、「好き」と「強み」の使いどころを間違えているケースがとても目立ちます。
「好き」の使いどころ
一つずつ解説すると、「好き」は、努力に対して使います。
スムーズに事業を立ち上げることを考えるのであれば、
- 業界の上位をリサーチ
- 勝てそうな穴をリサーチ
- 勝てそうな穴でNo.1 を取る
- No.1 を横展開させて上位を取る
- No.1のポジションを周知させるべくブランディングする
…ということをやっていく必要がありますが、よっぽど好きじゃないかぎりは綿密なリサーチなどはそうそうできるものではありません。
『メモの魔力』という本が絶賛人気爆発中の前田さんなどは、半日で1万文字以上のメモを取るという話もあります。こんなの好きで無意識にやれるレベルじゃないとムリですよね?^^;
なので、「好き」は努力に対して使います。
「強み」の使いどころ
次に「強み」の使いどころですが、強みは「成果」に対して使います。
ある意味でいうと、成果は「強み」でしか出せません。強みで出せない成果は、「なめらかな起業」とは言えません。
強みとは天才性とも言い換えることができる部分で、ほかの人よりもはるかにスムーズにかんたんにできてしまうことを指します。
私だったら、
- 文章を書くこと
- 抽象化、体系化、構造化
- 響くPRポイントの抽出
- 情報キュレーティング
- 強み分析
などがそれにあたります。
まとめると、
「好き」を努力に対して使い、「強み」を成果に対して使う。
これが、「なめらかな起業」の出発点になります。
なめらかな起業の実現と根本課題
ここで非常に大切なポイントがあります。
それは、自己分析をしてはいけないということです。
私は、好きなことを仕事にしようとしてうまくいかないケースをたくさん見てきました。
強みを探して、そのまま強み発掘ジプシーになってしまう人たちをたくさん見てきました。
だからあえて言います。
「自己分析をしてはいけません!」
「好き」を努力に対して使い、「強み」を成果に対して使う。
そのためには、他者からマネジメントされる必要があると私は考えています。
今日の冒頭で、起業という表現は使うけれどそれは「企画」や「プロジェクト」という意味合いでとらえてください、と伝えた意味がここにあります。
起業をひとりでするためには、
- 営業領域
- 専門家領域
- 戦略性領域
- 事務領域
の4つは少なくとも押さえる必要があるからです。この全方位に対して、「好き」と「強み」を使える人はかなりのレアキャラです。
その例としては、
「好き」→リサーチやPDCA
「強み」→目標達成や分析
というような組み合わせの人です。
おそらくこういう人は、どの分野でもそれなりの成功を収めることができると思います。
でもこういう、ビジネス戦闘力が生まれつき高いような人間ばかりではないので、どうしても「なめらかな起業」には至らない現実があるわけです。
たとえば今日の例に出した、『株式会社ラブグラフ』さんのCCOを務める「あんみつ(@murata_atsumi)」さんは、
「好き」→カップルのLOVEが大好き
「強み」→ものごとのデザイン化
…などがありそうです。
事実、あんみつさんはデザイナーのお仕事を2015年の立ち上げ当初はメインでしていますが起業の分野でもこういうメモを残していたりします↓
<マネジメント>
扱いやすい人ではなく自分より優秀な人を入れる
意思決定早く、先延ばしにしない
社員にその道のプロがいなければ、株主や顧問、アドバイザーとしてかかわってもらう
人のマネジメントはスキル。勉強すべし
決まらなくて組織が止まるのが一番の悪。スタートアップの1日は1ヶ月
<プロダクト>
呼びやすい名前をつけた方がいい
利益率はわりと後から調整できる
プロダクトはまずPMF、ある程度の調査のあとMVPなりキャンペーンなりでクイックに検証、リーチはSNSなりリスティングなり適したチャネルで
ユニットエコノミクス成立したらペイド踏めると早い、お金あるといいww
バイラル要素をプロダクトの中に入れ込めると楽、たとえ単価を下げたとしてもマーケ費用と考えると安い場合が多い
一部に専門用語が使われているので少しむずかしく感じると思いますが、起業のことを考えるなら、上記のことは比較的当たり前のことだとは思います。
ですが、そもそもこのように考えることができるのは、「好き」を努力に対して使うか、「強み」を成果に対して使うか、のどちらか、または両方です。
これは、
- 営業領域
- 専門家領域
- 戦略性領域
- 事務領域
の中にある、「戦略性領域」の内容です。
知識のあるなしは別として、無自覚でもいいのでこういうことができる人じゃないと、正直、ひとり起業は厳しいです。
自己分析をしてはいけない
の部分に話を戻すと、こういうことを、「好き」と自覚することも、「強み」だと自覚することも、けっこう当事者本人はわからないんです。
あなたの「好き」と「強み」は、
「好き」→カップルのLOVEが大好き
「強み」→ものごとのデザイン化
ですよと言われて、上記のようなプロダクト論、マネジメント論を語れるようになるとは、本人にはとうてい思えないわけです。
だから最初から、「起業経験者」なり「分野の経験者」の力を借りて、
マネジメントされる
ほうが、スタートから経験値を貯めていけますよね、という話です。
そして、一度「自分」というものの使いどころがわかってくると、今度はひとりで色々とできるようになってくるものです。
『出会って5秒でバトル』というマンガがあります。
『ワンピース』でいうところの悪魔の実の能力や、『ハンター×ハンター』の念能力みたいなお話なのですが、とにかく自分に与えられた能力の使いどころが分からないとボロ負けしてしまうわけです。
私たちにとってのそれは、「好き」と「強み」に該当します。うまく起業領域で人にマネジメントをしてもらうことで「自分」の使いどころが掴めます。
決して自分で「自己分析」してはいけません。そして、経験値として自分の使いどころがわかってきたら、いよいよ「起業」へ踏み切ります。
こういった手順を踏めること。こういった仕組みを利用できること。
それが「なめらかな起業」につながっていくのかなと考えています。
なお今回の「なめらかな~」という表現は、大好きな家入一真さんの本からインスパイアされました。
著書でもある『なめらかなお金がめぐる社会。- あるいは、なぜあなたは小さな経済圏で生きるべきなのか、ということ。』から使わせていただきました。
家入さんというのは、Webサーバーのロリポップやクラファンのキャンプファイヤーを作った人です。
私の考える、『居場所』という概念に非常に近く、共感するところの多い内容ですので、まだ読んでいない方はぜひ読んでみてくださいね!