あなたはビジネスコンテストに出場しようと考えたことはありますか?
最近、私のクライアントの方々が連続してビジネスコンテストに出場するというケースが増えてきましたので参考になればと思い記事にしてみました。
ビジネスコンテストという言葉を初めて聞いた方は、ぜひGoogleで検索してみてください。今はたくさんのそういった企画が全国で行われています。
そして、その出場の際に必要となるのが『ビジネスプラン』や『事業計画書』です。
それらには主に次のような項目が記されています。
- 創業の動機
- ターゲット
- ベネフィット
- 市場の状況
- 競合やライバル
- 商品ラインナップ
- 独自のウリ(差別化)
- 価格や販路
- プロモーション計画
- 収益の見通し
- 収支コストの計画
今日はこれらの中でも、書き方を誤解しやすい個所についてレクチャーしていきたいと思います。
具体的には、次の4点に注目していきたいと思います。
- 創業の動機
- ターゲット
- ベネフィット
- 独自のウリ
創業の動機に何を書くか?
ビジネスコンテストに出場する際に提出する『ビジネスプラン』や『事業構想』『事業計画書』の類は、何のために書くのかというと、その答えはシンプルで、投票権のある審査員から合格をもらうためです。
そう考えた時に、『創業の動機』のところへ素直に気持ちを書くだけでは足りない、ということが分かるでしょうか。
ビジネスプランだけでなく、採用の面接も、高校や大学の面接入試も、本の出版企画書も、メディアへのプレスリリースも、さらに言えば恋愛でも、基本の考え方は一緒だと思う。すべては『相手視点』を持てるかどうか。自分が伝えたいことを伝えるだけでは意味がなく、それは『伝わる』にはならない。
— 大崎博之(ヒロさん) (@H_Yuki2014) 2017年12月15日
何十通、何百通というビジネスの企画書を読む側のことを考えれば、ほとんどの場合、あなたがどんな気持ちで起業したいのかは合否にあまり関係がありません。
それよりも注目するのは、「本当にビジネスとして成り立つ企画だろうか?」という部分です。
ですので、もし私が審査員だったら、あなたの創業に対する想いというのはほとんど読まないと思います。それよりも大事なのが、“ビジネスとして成り立ちそうかどうか” の一点です。
それを伝えるために大事な2つの視点をお伝えします。
市場の背景を書こう
例えば次の両者の発言を比べてみてください。
A:「小さな頃、私は病気で苦しみました。だから医療の力を使って同じような悩みを抱えた人たちを救いたいと思いました」
B:「アジアの貧困を目の前で見てきた私は、世界を変えるリーダーを多く輩出できるような教育機関を作ることが必要だと思うようになりました」
どちらも動機として問題はないというか、十分だと思います。そもそも起業の動機に良いも悪いもありません。
ですが、審査員の視点に立った時、『社会的な課題』をより感じさせるのは後者のBの発言です。どこに違いがあるのかというと、Aは主観的な動機であり、Bは客観的、社会的な動機だという部分です。
私が『aeruブランド』を愛してやまない理由の1つが、そこに社会的な意義が存在しているということ。「伝統産業を子どもにつなぐ」という事業ミッションに共感できているからこそ、『aeruブランド』に払ったお金が社会を循環し、素敵な世界を生み出すと確信できるのだ。
— 大崎博之(ヒロさん) (@H_Yuki2014) 2017年12月15日
客観的、社会的に課題があることに関しては、審査員の立場である人間からも理解がされやすいと私は考えています。(初めて会った人間の主観的な動機に対して、いきなり共感が生まれるのは稀かと思うのです)。
そしてさらに言えば、客観的、社会的な課題に対しては審査員の誰もが一度は「どのようにすれば解決できるだろうか?」と考えていると思いますし、その上で、「やはり一筋縄では解決できないな」と感じていることが多いと思います。
だからこそ、「では一体、どんな画期的でユニークな方法でそれを解決しようとしているのか?」と期待感が高まると思うのです。
あなたである理由を書く
前半で、「こういった世の中の背景があり、そこに問題があり、それをまだ誰も解決できていないところに課題があると思っています」とまずは語りましょう。
その上で、“なぜ私がそれをやらなければならないのか?” という理由を伝えましょう。
ここで大事なのは、あなたの過去の経験や体験などのストーリーです。
「小さな頃、私は病気で苦しみました。だから医療の力を使って同じような悩みを抱えた人たちを救いたいと思いました」
というような主観的な動機は、『創業の動機』の前半ではなく、後半に書くと効果的なのです。
前半に書くと、「へ~、そうなんだ~、だから何?」で終わってしまいますが、先に世の中への問題提起をした上で、後半に自身の経験や体験を語ることで、それは説得力に変わります。
今回の例で言えば、前半に
「アジアの貧困を目の前で見てきた私は、世界を変えるリーダーを多く輩出できるような教育機関を作ることが必要だと思うようになりました」
と伝えたのであれば、後半は
「私にはアメリカの大学で仲良くなったアジア人の女性がいます。大学の卒業後にお互いの母国を訪問した時、私は衝撃を受けました。あんなに優秀な彼女が、まさかこんな貧しい生活を強いられていたなんて! 世界に必要な人材が、生まれた環境の良し悪しで埋もれていくなんてあってはならない。そう感じたんです」
と続けば、そこには力のこもった説得力が生まれるのです。
ターゲットの選定
多くの人がターゲットの設定(理想の顧客像)を描く際にミスを起こします。
30代子育て中の女性でパートタイム勤務…、というようなデモグラフィック(人口統計的)な情報だけを羅列してしまう傾向があるからです。
それよりも、もっと価値観や購買動機に直結するようなサイコグラフィックな情報、例えば、
「何に不満や不安があるのか」
「どんな目標があり、どんな 課題や壁を感じているのか?」
を明確に決めることが大切です。
そしてさらに言うなれば、『不満や不安、不快』または、『目標達成のための課題、壁』を、あなたの『バックエンド商品(本命商品)』で解決できることが極めて大事です。
多くの人がここで、『フロントエンド商品(お試し商品)』 で解決できる問題を取り扱い、 間違ったお客様を設定してしまいます。
よくあるのが、「私の1万円の商品を2時間体験してもらえれば、お客様の問題はすべて解決できてしまうので、本命のバックエンド商品を売ることができないんです」という状態。
すると当然ですが、お客様はお試しの商品でも十分満足してしまうので、バックエンド商品の検討をそもそも必要としない、という現象が起きてしまいます。
ということはつまりターゲットの選定は、『バックエンド商品をそもそも必要としている人』という基準で考える必要があります。
表現方法を変えれば、大金を払ってでも解決したい問題や悩みは何か? という視点からお客様像を描く必要があるということです。
自分の持っている技術やリソースから先に考えてしまうと、そもそもお金を払うほどでもないような浅い悩みに訴求することになってしまいがちです。
お客様が大金を払ってでも解決したい問題を扱うのですから、あなたも中途半端な商品や技術は提供できません。
自分が本当に成果を出せる範囲を決め、お客様の課題も合わせて絞り込む必要があります。
つまり『あなたの想いがあるだけ』では売れないし、『大金を払うようなお客様のニーズがあるだけ』でも売れません。
そうではなく、想いやニーズもあるけれど、同時に『あなたが成果を約束できる』範囲のもの、この3つの要素を押さえた商品でなければ売れ続ける商品にはならないということです。
この絞り込みが行われない限り、あなたの手元には『売れるもの』『売りにくいもの』『売れないもの』が混在した、何でも屋さんになってしまうということも意味しています。
ベネフィット
起業してビジネスをしていく上で、『ベネフィット』というキーワードは切っても切り離せない存在です。
ベネフィットとは、設定したターゲット(理想のお客様)が手にする未来、バックエンド商品を購入したあとに見えるであろう『景色』のことを指します。
あなたのお客様は、あなたのサービスによってどんな変化を起こすことができるのか。どんなBefore Afterをもたらすことができるのか?
まずはそれを書きだしてみましょう。
ここで大事なのは、
『約束できる範囲』の設定を2段階で行うことです。
完全成果報酬型でない限り、 コントロールできないことまでを約束するのは好ましくありません。
例えば、『家の設計図を作り、建てる』ところまではお約束できても、『新築での幸せな家庭生活』まではお約束できませんよね?
あくまで、“期待できる景色”として、新築での幸せな家庭生活があるということになるのです。
1段階目のベネフィットは、コントロール可能な約束できる未来です。これを『機能的ベネフィット』と言います。
2段階目は、それによって得られる可能性があるであろう、コントロール不可能な期待です。これを『感情的ベネフィット』と言います。
ただ、この2段階目までのベネフィットを覚悟を持って「お約束します!!」と言ってくれる営業マンさんには、けっこうグッっとくるものがあるんですよね…。
だからこそ私たちは、「この人のためだからこそ、懸命に仕事を頑張ろうって思える」という人をお客様にする必要があるというわけです。
独自のウリ
『独自のウリ』の欄に、独自のウリを書いてはいけません。笑
あなたのユニークさや独自性をここで求めているわけではないからです。
本当の意味での『独自のウリ』を書くためには、次の2点の両方を押さえる必要があります。
- ライバルとの差別化要素
- 絶対に成果を出せる根拠
ライバルとの差別化要素
問題解決の方法や提供するサービスがすでに存在しているのであれば、あなたが起業する必要はありません。既存のサービスを提供する会社へあなたが就職すれば良いだけの話だからです。
あなたがビジネスコンテストに出場して起業を志すということは、これまでにない解決策、競合やライバルが提供できていないサービスである必要があります。
ですが、ライバルと違うというだけでは『ウリ』にはなりません。
次の項目、『絶対に成果を出せる根拠』が必要になります。
絶対に成果を出せる根拠
競合やライバルとは異なる解決策でありながら、しっかりとお客様に成果を提供できるような裏付け、根拠が絶対的に必要です。
よく『独自のウリ』という表現を使う際に、『USP(ユニーク・セリング・プロポジション)』というマーケティング用語もセットで使われたりします。
この『ユニーク』の意味を日本人は間違って認識してしまうがゆえに、ライバル調査だけに時間をかけ、お客様の声は無視した『独特なウリ』が作られがちなのです。
ライバルとの違いを打ち出しつつ、お客様の成果にコミット(約束)できる根拠こそが本当のUSPの意味であり、『独自のウリ』なのです。
これだけの説明では抽象的すぎてピンとこない方は、こちらの記事も参考にしてください。
USPとは何か? │ 起業家の覚悟が問われるたった1つの約束
まとめ
今日の記事で私が伝えたいことは一つだけ、
「審査員の目線に立ってビジネスプランを描きましょう」
ということです。
ここで言う審査員とは、ビジネスコンテストの審査員もそうですが、つまり同時に『世の中の人々、社会に受け入れてもらえるかどうか』を指しています。
これは商品設計をする時にはいつも考えなくてはならない『顧客視点』という考え方です。
<創業の動機>
×自分の想いの羅列
○社会的問題や背景
<ターゲット>
×あなたができること
○お客様の求めること
<ベネフィット>
×ベネフィットが1つ
○ベネフィットが2つ
<独自のウリ>
×ライバルとの差別化だけ
○お客様への強いコミット
あなたの主観的な視点を取っ払い、お客様視点、審査員視点に立ってビジネスプランを描くことをぜひ意識して、今後の活動に活かしてみてください。
これはきっと、採用面接や入試面接、さらには恋愛でも同じことが言えるかもしれません。相手の気持ちになって、相手の視点に立ってコミュニケーションをする…。
あなたの考え方にぜひ取り入れてみてください。