SNS起業、起業女子、という表現の他にも「アメブロ起業」という言葉があることを最近知った私です。
どれも肯定的な表現ではありませんよね?^^;
この「アメブロ起業」ですが、明確な定義があるわけではないのですが、どうやらいくつかの特徴はあるのかなと思っています。
ひとつは「アメブロ」を使って起業をしている、ということ。
そしてもう一つが「○○専門コーチの大崎です!」というように、書き出しがいつも自己紹介で、しかも必ず何かの専門を名乗っている。
こういうのを見ると、「アメブロ起業」の人なんですね、と言われてしまうらしいです。
今日のテーマはこの「○○専門」の部分に照準を合わせたいと思います。
「○○」専門と名乗るのは、マーケティング用語での「ニッチ戦略」という考え方のひとつなのですが、多くの人がそこに潜む問題に気づけていません。
果たして、「○○専門」と名乗ることは、メリットなのでしょうか、デメリットなのでしょうか?
ニッチ戦略のメリット・デメリット
「ニッチ戦略」という用語だと馴染みがない人も、「商品を絞り込むこと」「お客様を絞り込むこと」という表現ですと、聞いたことがある人もいるのではと思います。
起業塾や経営塾、セミナーなどに通った経験がある人、もしくはビジネスのコンサルタントを雇ったことがある人であれば、一度は必ず言われているのではと思います。
お客様ニーズはあるけれども、その規模が小さいがゆえに商品提供がされていない分野のことを「ニッチ市場」と言います。
ある実例を紹介しますね。聞いた話ではあるのですが、モンゴルでは「ユニクロのヒートテック」が人気があるそうなんです。だけど、わざわざユニクロが出店するほどの市場規模ではない(=お客の数が少ない)。
そこに目を付けたある女性が、日本のユニクロでヒートテックを買い付けてモンゴルで販売したそうなんです。それが大ヒットして、その女性は日本に家を建てたとか、建てなかったとか。
これが「ニッチ戦略」なのですが、まずはこの「ニッチ戦略」のメリットとデメリットから今日はお伝えしたいと思います。
ニッチ戦略のメリット
まずは自分の専門分野が明らかになることで、「何屋なのか?」「何に強いのか?」が相手に明確に伝わるようになります。
「経営コンサルタントです」と名乗るよりは、「コスト削減に特化した業務改善コンサルタントです」の方が、依頼する側もお願いしやすいと思います。
学習塾や家庭教師でも、「東大の入試に特化しています」とPRする方が、お客様の要望とのミスマッチも少なくなります。東大入試専門と言っているのに、中堅私立大学の入試対策をお願いしたりはしないはずです。
そして同時に、このような「商品の絞り込み」「お客様の絞り込み」を行うことで、日頃発信しているのブログなどのテーマにも一貫性が出ます。
さらに良いことには、商品の単価を上げられる可能性も出てきます。それだけ専門性が高いということは、解決能力への期待も高まりますし、絞り込みを行うことによって競合(ライバル)を減らすこともできるからです。
多少高いお金を出しても、何かの分野に特化しているプロに依頼したいと考える人は多いものです。
あとは、交流会で名前を思い出してもらいやすくなったり、ブログを認知してもらいやすくなったりはすると思います。口コミも広めやすいですよね、専門性が明確だと!
「何屋か?」が不明瞭な人よりは、「○○」専門、の方が覚えやすい、ということです。
ニッチ戦略のデメリット
「ニッチ戦略」を個人起業家が実施する際に気をつけたいのが、細分化をやりすぎる行為です。
ニーズはあるけれども、大手が手を出すほどの大きな市場(マーケット)でなければ、そこにビジネスチャンスがあります。特に個人起業の場合ですと、大手と闘っても確実に負けます。
商品の品質で負ける、というのもあるかもしれませんが、何よりも「価格競争」で負けます。
特に脱毛エステなどになると、大手は平気で「298円」、時には「0円」みたいなことを仕掛けてきます。考えるまでもなく、個人起業家がそんなことをすれば、たちまちに立ち行かなくなってしまいます。
さらにいうと、品質で負けるというよりも、「Replace(置き換え)」で市場から排除されてしまうことの方がもっと怖いです。
ポータブルCDプレーヤーではなくiPodやiPhoneが主流になったように、「昔はこういう製品があったよね」と言われるようになってしまうことが技術革新によって平気で行われます。
少し前のパソコンのマウスには「ボール」が入っていたのを知っている人はどれぐらいいますか? 今はほとんどのマウスが光学式になってしまっていますよね。
これが、「アメブロ起業」と呼ばれるような、アメブロユーザーの中で商品を売り買いするような相互援助会のような市場ですと、さらに問題は深刻です。
お客様の数が少ないものだから、どんどんニッチに絞り込む必要性が出てきてしまうからです。
「女性専門エステ」から「足痩せ専門エステ」になり、「出張専門足痩せエステ」になり、最後は「20代女性限定の出張足痩せエステ」みたいな、訳の分からない状態になりかねません。
外部の技術革新によって自分たちのサービスが「無力化」される前に、自分たちで自らの手でお客様がいない場所へ突っ込んで行っているのが実際の現状ですから…。
この状況は特に、コーチ、コンサル、セラピストと呼ばれる職種の中で深刻化しています。
そもそも「アメブロ起業」をしているほとんどの人が、上記の職種だからです。
アメブロのビジネス利用をする自宅サロンのオーナーなどが急速に増えた時期があり、それも手伝ってアメブロの中が、コーチやコンサルにとって旨味のある場所になっていったのです。
…ちなみに、アメブロは商用利用は、禁止です。
(※2018年12月25日よりアメブロの商用利用が解禁となりました)
アメブロ起業の問題をどう解決するか?
アメブロ起業、という言葉の他に類似表現として、「SNS起業」「起業女子」というものがありますが、このいずれの場合も問題は共通です。
「そもそも小さな市場の中でお客様を奪い合っている」ことが問題なのです。では、これに対し、まさに現場で直面している個人起業家の方々はどのような施策を取っているのかを見ていきたいと思います。
施策① 起業市場の拡大
マスメディアの力を借りたり、各業界で影響力がある人たちが集まる場所でSNS起業の魅力をアピールする方々がいらっしゃいます。
その誰もがすでにSNSの恩恵を受けて、年商数千万~億単位を稼いできた方々です。
テレビの主演や雑誌への掲載、出版などを通して着実に認知を広げ、この市場自体をもっともっと大きくする動きをすることで「お客様を奪い合う」という状況を減らそうと考える方々がいるというわけです。
実行のためにはある程度の「メディアに対する影響力」が必要になってくる手法です。
施策② 一般路線への変更
そもそも「アメブロ起業」自体がどちらかというと、「C to C」に近いビジネスモデルだった、という事実があると思います。
「C to C」というのは、メルカリなどで売買する消費者間取り引きのことを言うのですが、これが「メルカリ」というプラットフォームを借りるのではなく、「アメブロ」というプラットフォームだった、という話です。
…あ、プラットフォームというのは「場所」のことを言います、ちなみに。
とはいえ、この「アメブロ起業」という形は「C to C」に近いとはいえ、自分たちで商品を考え、集客し、セールスをし、売上をコントロールするという意味では立派なビジネスです。
小さなビジネスではありますが、この経験は非常に大きな価値があります。
その実績を元に、もっともっと広い大海原へ活路を見いだすのが「一般路線への変更」です。
具体的には、そもそものプラットフォームであった「アメブロ」や「フェイスブック」を抜け出し、法人との契約を結んだり、オウンドメディアと呼ばれる自社媒体への移行を進めている人たちを指します。
施策①に比べ、こちらはメディアへの影響力は不要ですので、個人の実力を担保に進められます。
施策③ あえてアメブロに残る
世の中の流れの真逆を捉えるというのは、ビジネスの王道でもあります。
これだけ「アメブロ起業」の問題が叫ばれていると、施策の①か②に取り組む人たちが増えますし、そのどちらでもなく、起業自体を辞めてしまう人たちも多発すると思います。
ですが、その中であえてアメブロの中に残り、強者がいなくなった場所で生き残るという選択肢も、なくはないと思います。
もちろん、アメブロサービスの終了や、商用利用禁止の強化、フェイスブックの商用利用は別のプラットフォーム(例えば、Facebook for Businessみたいな新サービス)を利用するように勧告される、などの話が出てしまったらアウトです。
そもそも「アメブロ起業」自体が、こういう危うさを含んでいるので、あまり長く居続けることはデメリットの方が大きいと私は考えています。
まとめ
結論としては、もはや「アメブロ起業」という市場は、ほぼ崩壊していると思っています。
その中で生き残りを考えるのであれば、よりニッチな市場を求めて「○○専門」を細分化するよりは、もっと広い市場へと出かけていき、その中で力を発揮することが重要かと思っています。
正直、「アメブロ起業」の中はカオスでした。商品の品質にかかわらず、サービスが高値で取り引きされるなど、けっこう闇を感じる部分もあります(まるで芸能界のように)。
そうなると、一般市場へ路線変更するということは、もっとちゃんとした実力が求められます。
本当に世の中に求められる【商品力】が必要、ということです。
「○○専門」とアメブロで名乗っているのは、時に、若干怪しい存在に映ります。一般の人から見ると、ちょっと違和感があると思うのです。
もう一度、一般の人たちから見た時の自分たちの「市場価値」を見極め、再スタートするタイミングに来ている。私はそのように感じています。
狭い「アメブロ市場」の中でもがくよりも、もっと本質的なビジネスの力を身につけ、原理原則を学ぶ機会をもっと増やすことが、「○○専門」という肩書きとにらめっこするよりも有益かと思います。