資金力にも労働力にも限界のある個人起業家にとって、高単価商品を1つ用意し、それを軸にビジネス展開をすることは必須の行為とされてきました。
その論理は、もっともコストのかかるビジネス活動は【集客】であるという前提の元、少ない集客で大きな売上を作る方が、経済的なストレスもなく、お客様に多くの時間を割き成果に貢献できる、というもの。
この論理は私も正しいと思っています。
一方で、果たしてそれがすべてなのか、ということも合わせて考える必要があると私は考えています。
その理由をこれからお伝えしていきますね。
SNS市場における高単価ビジネスの限界
もっとも効果的、効率的に収益を上げていく方法が【高単価ビジネス】です。
これまで1回あたり、1,000円~10,000円という価格帯の商品しか持たずに営業活動をしていると、月に30万円を稼ぐためには、1ヶ月におよそ30人~300人のお客様に商品を買っていただく必要があります。
30人ならまだしも、300人を毎月というのはかなり厳しいでしょう。月に30人というのも、年間で360人ですから、かなりの労力です。
実際、年商1000万円という売上を立てている起業家の多くは、例えばコンサルタントの場合ですと年間で20~30人程度のはずです。
つまり、平均単価で30万円~50万円の商品やサービスを提供している計算です。
2015年の7月に発売され、瞬く間に大ヒットした書籍『可愛いままで年収1000万円(WAVE出版)』の世界を実現するため、多くの女性が起業に取り入れたのがこの講師コンサル型のビジネスモデルでした。
本気で「年収1000万円」を目指すのであれば、上記の価格帯のサービス提供は、個人起業家にとっては必要不可欠とも言えます。
事実、その価格帯、もしくはそれ以上のものも十分に出回っています。私が知る限りの最高価格は120万円のマーケティング塾がありますね。
ですが、これをSNS起業市場で行うがゆえに、市場を崩壊させてしまっている原因がいくつかあると考えられるので、そちらについて自論を語ってみたいと思います。
情報弱者が狙われる結果に
コンサルタント選び、経営塾選びは非常に難しい選択を迫られます。
なぜならそこに、金銭と時間、労力などを注ぐ必要があるからです。途中で自分の選択のミスに気付いた場合、金銭的なロスこそあれど、時間的、労力的な徒労は避けることができるかもしれません。
ですが、できることでならば一切のロスなく、得たい成果を手にすることができればベストなはずです。
そのために押さえるべきことがいくつかあります。
真の課題を分析できない
個人起業家の多くは、活動の初期であればあるほど、営業からサービス提供、事務管理までをすべて一人で行う必要があります。
そのため、自分のビジネスの成長を阻んでいるボトルネックがどこにあるのかが見つけにくいという状況に陥りがちです。
ざっと考えるだけでも、
- 思考法の問題
- 商品単価の問題
- 精神的な問題
- プロモーションの問題
- 価格帯の問題
- 時間管理の問題
など、さまざまな要素が絡み合っています。
その中で、自分がいまもっとも解決しなければいけない問題を見極めた上で、経営塾やコンサルタント選びをすることが大切になります。
企画に興奮しすぎる
お金は貯金するもの、という日本人に蔓延している考え方は、そもそも銀行側の企画だということに多くの人は気付いていません。
「そういうものだ」として、前提を疑わない以上、仮にそれが間違った選択であったとしても、人々はそれに気づきません。
これと同じように、マーケティングを専門とするプロたちは「心理トリガー」と呼ばれる、人を行動させる技術に長けている人が多くいます。
選択に必要なだけの自己分析を行うことができたとしても、正しい商品を見極める冷静さにかけると「選択ミス」を起こします。
結果、多くの人は真の問題に気づかないまま、売り手の企画に興奮して、我を失い、お申込みをしてしまいます。
冷静に分析した選択でない以上、そこで起こり得る「選択ミス」の確率は決して低くはありません。
絶対価値判断ができない
目に見えない付加価値ビジネスの多くは、そこに「相場」という感覚を得づらいという特徴があります。
1dayのセミナーでも、数千円のものから数十万円のものもあります。その価格が本当に適切かどうかは分かりません。もはや本人の納得感の度合いで計るしかないのです。もしかするとそのセミナー講師は、素人の可能性もあるわけです。
一方、商工会などの施設を訪れると、経営コンサルタントの方を呼んでの講座や無料相談などを実施していたりと、公共的な場で、しかも無料で高度な情報が受け取れる場合があります。
こういったことが日常的に起きている中で大切なのは、商品を見極める確かな観察眼と、自分の中にある確固たる価値基準、選択基準です。
自分の軸がブレていると、安易に「高いもの=良いもの」という図式を描いてしまいがちです。
SNS起業市場ならではの特徴
SNSを使った個人起業家の集客の特徴は、人柄で惹きつけて商品をご提案する場に引きつけるというものです。
この独自の特徴があるがゆえに「確かな情報」よりも「この人だったら大丈夫そう」という発想になってしまったり、「真の課題」が自分でも分かっていないがゆえに選択ミスを起こしてしまう、という理屈です。
こういった状況の中で【高単価商品】が市場に多く出回ると何が起きるのか、何が起きてしまっていたのかを見ていきたいと思います。
リピートが生まれにくい
ビジネスは「フロー型」と「ストック型」に分かれます。
例えばセミナービジネスなどは、新規集客に依存する傾向のある「フロー型」のビジネスです。
一方、水道料金などは、払い続けないと生活ができないため支払いは発生し続けます。これが「ストック型」のビジネスです。
収益を右肩上がりに伸ばそうと思うと、少しでもリピーター客が増えるような仕組みにしたり、ストック型のビジネスモデルを導入して固定収益を増やす必要があります。
ですが、高単価ビジネスの多くは売り切り重視の「フロー型ビジネス」の典型です。
一度体験セッションや説明会を経験したけれど、その時はタイミングでなかったためお申込みをしなかったとしましょう。
そうすると、せっかく目の前にまで来てくれた見込み客の方を「半永久的」に手放すことになってしまいます。
口コミ発生度が極めて高い
SNSというシェアや拡散が起きやすい場所をメイン拠点に構え、しかも月間の検索数が100~1000しかないような狭い市場です。
狭い場所でSNSを使っているため、良くも悪くも口コミが出回りやすい傾向にあります。
良質な商品ばかりであれば良いのですが、SNS市場で起業を試みる多くの人は「キャリア」が浅い人が大多数を占めています。
専門能力やビジネス技能が低い状態で商品の高単価化を図れば、仮に商品が売れたとしても成果の出方によっては中長期で長く経営をすることが難しくなることも考えられます。
短期的な活動を割り切るならともかく、そうでない場合は安易な高単価商品で信用を失ってしまうことに注意が必要です。
競合が多く差別化が困難
一時期、フェイスブックのタイムラインが「ラウンジでのお茶会」「自撮り」「パーティーの様子」「セミナーの集合写真」で溢れかえっていたことがあります。
これは、狭い市場の中で全員が同じノウハウを実行したがゆえに起きた現象で、一切の差別化が行われない状態になりました。
こうなると競争力のない商品やビジネスを扱っている人が淘汰されるスピードも早まってしまうわけです。
長く着実に、信用信頼を積み重ねるビジネスとは真逆の形になってしまった、というわけです。
まとめ
高単価商品を扱う「講師コンサル型」のビジネスはもろ刃の剣です。
確かにお金も時間も労力もかけられない個人のリソースでは、高単価ビジネスを扱うことは非常に効率的です。
ですが一方で、非常に短期的で、SNS市場という場所で一気に刈り取りが行われたような、そういう印象さえあります。
ビジネスのやり方は様々です。
少ない集客で高収益を上げるための「高単価ビジネス」がある一方で、安い価格でも売上を右肩上がりにできるような「低単価リピートビジネス」の方法もあるわけです。
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いま自分が本当に取り組むべき仕事は何か?
そのあたりを改めて考えてみることで、長く持続可能なビジネスへと転換することができるのではないかと私は考えています。