生活のためにお金を稼ぐ必要がいらなくなる時代。
お金のために働く最後の世代──。
そんな未来予想図がリアリティを増してきた今、私がもっとも注目しているのは、テクノロジーの発展によって大きく変わるであろうと予測される『お金』の定義です。
結論から言ってこの『お金2.0』は、絶対に絶対に読んでおくべき一冊だと自信を持って推薦できます。
仕事選びやお金の使い方、自分の生き方の方針など含め、明日からの一歩が大きく変わる一冊と思っています。
- 第1章:お金の正体
- 第2章:テクノロジーが変えるお金のカタチ
- 第3章:価値主義とは何か?
- 第4章:「お金」から解放される生き方
- 第5章:加速する人類の進化
上記の章立ての中から特に印象的な部分をピックアップし、私なりの本レビューとして感想や気づきなどを書き綴っていこうと思います。
著者は、株式会社メタップスの代表取締役社長、佐藤航陽(さとう・かつあき)さんです。
お金の正体とは何か?

お金はツールである。
そんな話をよく聞くと思います。かつて物々交換をしていた時代に、それでは食べ物などの場合はすぐに腐ってしまうので、その価値を保存する役割として貨幣が生まれた、というアレです。
最古の貨幣は、紀元前1,600年ぐらいの貝殻だった、という話もあります。
お金の正体というのはそのように、『価値の保存・尺度・交換』の役割があると、この本では定義されています。
ただし、その役割に異変が起きます。
「お金」が社会の中心になるにつれ、価値をどう提供するかを考えるよりも、「お金」から「お金」を生み出す方法を考えた方が効率的であることに、気づく人が出てきます。
(中略)
証券化などのスキームが生み出され、「お金」を金融商品として販売できるようになるとこの流れはさらに加速します。
このあたりから手段の目的化が進むわけですよね。
これが膨らむと異変が起きます。リーマンショックの時のように、実体とかけ離れた経済が生まれ、人々の生活とまったく関係ないところでお金だけが動くように…。
この揺り戻しで社会起業家やNPO団体が増えたのではと著者は指摘しています。
経済とは何か?

「お金」を語るときに外せないのが「経済とは何か?」という考えです。
著者は本書の中でこう定義しています。
経済とは簡単に言うと、「人間が関わる活動をうまく回すための仕組み」です。
「企業」も経済システムと言えますし、エンジニアが作る「webサービス」、地域の人たちが集まって盛り上げる「商店街」、大学生が運営する「サークル」も経済システムと考えることができます。
そしてこの「経済システム」は、自然界の法則に近ければ近いほど成功する、というのです。
そのうちの1つに、弱肉強食が挙げられます。
私はこれらの内容を知った時、人間が机上で理想論を語ることに意味がないのはこのためなのかもしれないと思いました。
私は仕事の関係上、どうすれば売上を作れるのか、どうすれば集客がうまくいくのかというマーケティングの研究や考察を日々行っています。
その時に、どうしてもキレイごとだけではビジネスを軌道に乗せられない、と感じることが多々あります。
思いなおしてみると、それらの理想論やキレイごとは、自然界の法則に反していたのかもしれません。
では、その法則とは何か?
これがまた残酷なような、厳しさを感じるルールとなっています。
経済システム5つのルール

経済システムは、誰かが一生懸命に走り回ることによって成り立つものではなく、大前提として自己発展的に拡大していく仕組みである必要があるといいます。
よくできた企業やサービスは個人に依存しません、仕組みで動きます。
フェイスブックの成功も、マーク・ザッカーバーグが頑張って人を読み続けているからではなく、「人が人を呼ぶ仕組み」がうまく作られているからに尽きます。
では、どうずれば自己発展的に拡大する、自律型の経済システムが作れるのか?
本書では5つの要素がそこにあると掲げています。
① 報酬(インセンティブ)
「素晴らしいと思うけど積極的に参加する気にはなれない」という組織やサービスは、このインセンティブの設計が欠けている。
② 時間で変化(リアルタイム)
常に状況が変化するということ。明日も明後日も来年も変化がまったくない環境では、緊張も努力も必要がなく、全体の活力は失われます。
③ 運と実力(不確実性)
未来がすべて決まっている世の中であれば、人は興ざめするでしょう。何が起きるか分からないことも重要な要素です。
④ 秩序(ヒエラルキー)
日本の士農工商、インドのカーストのような階級(ヒエラルキー)がある方が実は経済は自律して動くといいます。偏差値、年収、売上、順位、身分、肩書き、すべてヒエラルキーです。
⑤ 交流(コミュニケーション)
システム全体をまとめる接着剤の役割。古代ギリシャの「アゴラ」などの公共施設は政治的にも宗教的にも重要な場でした。
これらの5つの要素は、資本主義経済はもちろんのこと、ビデオゲームの世界やSNSの世界では綿密に設計されており、ビットコインを始めとする仮想通貨にも匠に用いられているそうです。

そういえばゲームと言えば、と思い出したことがあるのでシェアしたいと思います。私がガラケーのオンラインゲームにちょっとハマっていた時のお話です。
ゲームの世界は課金によってアイテムを増やしていくと、あっという間にキャラクターが強くなっていきます。すると必然的にヒエラルキー(階級)が生まれます。
課金をしないと、どうしても弱いキャラクターにならざるを得なせん。。ですが、ゲームも終盤に差し掛かり、課金をした強烈なキャラクターたちが一定数を占め始めると異変が起きます。
課金キャラが強くなりすぎるので「不確実性」がなくなり、状況も一向に変わらないという「リアルタイム性」も失われます。
最終的にはヒエラルキーの下位層には何の恩恵もないという「報酬(インセンティブ)」もなくなることからユーザー離れが起き、結果としてそのゲームは廃版になります。
こういうことがケータイゲームの世界ではよく起きていたのです。
そういう中で、自然界はこの5つの要素を網羅したものとして生態系(エコシステム)を構築し、維持し続けているわけですよね。脅威です。
資本主義から価値主義へ

仮想通貨、フィンテック、シェアリングエコノミー、評価経済…。
これからの「新しい経済」について網羅的に書かれている本書ですが、その中でも私が特に興味を持ったのは、第3章と第4章から成る、『価値主義』の考え方と、そこから生まれる「お金から解放される生き方」です。
ここからは、価値主義について感想を書いていきたいと思います。
価値主義で扱う3つの価値

私たち、特に30代より上の世代は、お金に換わるものこそが価値のあるサービスである、という認識で育ってきています。つまり、「資本主義」です。
これが1990年以降に生まれたミレニアル世代になると、それ以外の部分に価値を見いだす「価値主義」の考え方が重要となります。
では、「価値主義」で扱う価値には、どんなものがあるのでしょうか。
① 有用性としての価値
「役に立つか?」という観点からの資本主義がメインで扱う価値。
② 内面的な価値
個人の内面にポジティブな影響を与える愛情、共感、好意などの価値。
③ 社会的な価値
慈善活動やNPOのような、社会全体に有益な価値。
これまでは有用性のある価値、つまり「役に立つか?」「お金に換わるか?」という視点だけだった経済の形であったものが、なぜそれ以外の『内面的な価値』『社会的な価値』も価値として定義されうるのか?
その答えが、テクノロジーです。
まったく違うルールの経済

歌がうまいと現実社会ではカラオケの二次会で盛り上がるぐらいですが、これからはこういった経済的に無価値だと思われていた趣味も強みになります。
仕事が終わった後にネット上に歌っている動画をアップして、サービス内で多くのファンを獲得したとします。
そのサービスが発行するトークンを報酬として受け取り、そのトークンの価値が上昇していれば人気を失ってもこれまでの活動は資産として残ります。
上記の内容を読んだとき、「もう価値主義の時代になってるじゃないか」って驚きました。
例えば、『Live Me』というライブ動画アプリや『Show Room』などのサービスは、まさに上記のようなことが現実としてすでに存在しています。
投げ銭と呼ばれるネット上の通貨(トークン)を集め、それを使って商品購入などの取引ができたり、実際の法定通貨(日本円)に変えたりもできるわけで。
その他にも、キングコングのニシノアキヒロさんは、まず最初に信用を集め、それをクラウドファンディングでマネタイズする、というやり方をとっています。
Twitter のフォロワーに直接ダイレクトメッセージを送ったりして、賛同者からクラウドファンディングの寄付金を集め、ニューヨークでの個展を開催した話は『魔法のコンパス』という本の中にも描かれています。

ブログのPV数が多いブロガーさんは広告のクリックによるアフィリエイト収入で生計を立てている人もいますし、YouTuber も同様な収入の立て方、または企業スポンサーからの収入などもあるでしょう。
テクノロジーの発展によって、すでに信用の一部はSNSフォロワーという形で可視化されています。
本書ではこのような評価経済の落とし穴として、SNSフォロワーやPVというのはまだまだ本来の信用ではなく、「注目」や「関心」の域を出ていないため、炎上してでも認知されフォロワーや増えたりPVが増えれば良しとされているところに危険性があると述べています。
これが過度に進むと、資本主義経済の揺り戻しと同じで、価値主義の経済もバランスを取ろうとした動きからストップがかかるかもしれません。
実際、2018年の1月に起きたコインチェックでの仮想通貨流出事件は、これからの日本の新しい経済の流れをストップさせかねないインパクトがあったと思っています。
(興味ある方は、下記のnote の記事をご覧ください)
※仮想通貨流出の件、あの日わたしは1日中Twitterを追っていた。
とはいえ、です。
今の経済の中で、20代や30代が競争していくのは相当「分が悪い」。少なくとも旨味は少ない挑戦と言えます。
一方で、資本ではなく価値に着目するのであればチャンスは無数にあります。
この内面的な価値を重要視するのはミレニアル世代以降ですから、上の世代では理解しづらい。
これからの働き方を考える上ではここに絞って活動していくのが生存戦略の観点からも良いと思います。
と著者の佐藤航陽(さとう・かつあき)さんも本書の中で主張しています。
自分が心から熱中しているものに時間やお金、労力を注ぎ価値を高めることは結果として、目の前の儲かりそうなことに手を出すよりもはるかに利益を生み出しやすくなる時代。
そんな予感が漂う一言なのではないでしょうか。
まとめ

今は時代のはざまです。
新しい経済の未来がやってくるとはいえ、まだそれが「イマココ」にあるわけではありません。
むしろ次の世代が価値主義経済で生きやすくなるよう、その土台作りをするのが今の30代や40代の役割なのかなと感じています。
つまり、資本主義というお金を中心とした世界の中で生存しながら、新しい未来を切り開くという、けっこう大変なシーンかなと思っています。笑
私自身、大学卒業後の新卒を手放し、海外で1年のワーキングホリデーを利用したカナダでの生活。
帰国後に就職するも人間関係や職場でのやりがいを見いだせなかったことから5年で転職。その後3年ほどして独立を果たします。
資本主義経済のこれまでの流れからすると、完全なる負け組路線です。
でもだからこそ、これからの新しい経済「価値主義」への移り変わりに対応しやすかったというのもあり、なんとも複雑な気分です。笑
ただいずれにせよ、まだまだベーシックインカムがあるわけでもなければ、AIやロボット、ブロックチェーンの仕組みや仮想通貨などのトークンが普及したわけではありません。
この資本主義経済の現実と闘いながら、しっかりビジネスでの土台、足腰を鍛えながら、次の未来を切り開くための弛まない努力が必要…ということです。
未来の物語にはワクワクしますが、地に足をつけることも大事。
そんなことを思いながら、まずは「役に立つか?」という有用性の視点からの価値を高めながら、内面的、社会的な価値を生み出せる人間に成長すべく、トライしていこうと思います。
5,000字越えの大型レビューになってしまいましたが、何か拾えるものがあれば幸いです。
資本主義から価値主義へ。お金1.0からお金2.0へ。
足腰を鍛えながら、一緒に未来を切り開いていきましょう^^
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